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- 作者: 小森陽一
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/07
- メディア: 新書
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1章から3章は面白かったのだが、ところどころ「蛇足」的な内容があった。ま、それはそれでいいのだが。
基本的には、ホックシールドの感情労働論の「社会版」みたいな立論。「心」や「脳」のコントロールを「我々自身」ではなく、「小泉」や「企業」が行い、それが政治的なプロパガンダに応用されているという話。その際に危険なのは、様々な問題を「快」か「不快」へと単純化し、我々を思考停止状態へと追い込むことであり、それにより我々の脳(=人間の脳)が破壊され、「動物の脳」へとおとしめられる。
最近の「脳科学ブーム」には怪しさを感じてはいるのだが、それに対する有効な批判が無い気がする。本書は、小泉やブッシュなどの政治的なプロパガンダの批判にはなっているが、「脳科学」批判ではない。つまり、「脳科学」それ自体ではなく、流通の仕方、使われ方を批判している。その意味で社会学的な本だと思う。だが弱点は、前半に出てきた「脳科学」と、後半で小泉・ブッシュらが応用している「脳科学」は別物だということ。社会学的に正確に記述したならば、「脳科学者の言説→小泉・ブッシュらのプロパガンダ」という単純な図式にはならないだろう。確かに、小泉もブッシュもマーケティングの知見を利用はしているのだろうが、それと前半の「脳科学」はやはり別ものではないか?
・・・それにしても「心脳」って何なの!?